【カミーノ14】一番の贅沢
＜カミーノ15日目＞
黄色い矢印とともに歩く旅。
道しるべの指し示す、はるか向こうには何が待っているのか。
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あついっ！
今日はいまだかつてなく暑い！！！
雲ひとつない快晴の空。
背後から照りつける灼熱の太陽光線。
心なしかポピーも少しグッタリしているような。
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ログローニョを出発して一時間。
うだるような暑さに参ってしまい、ついに立ち止まってしまいました。
今日は体がいつになく重たい。
真夏日のピーカンお天気が、容赦なく体力を奪います。
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しばらく休憩を取ったおかげでなんとか呼吸も整い、
ようやくペースを取り戻してきたところで、
ログローニョから6km地点、爽やかな青の広がるGurajera貯水池に突き当たりました。
森、丘、麦畑の合間を縫うフランス人の道で、こんなにも広大な水のある景色を見るのは初めて！
せめて視界からだけでも涼を！と湖を眺めながら遊歩道を進みます。
木の小橋を渡ると、
沼のような茶色い水面にプカリと浮かぶ白鳥さん。
今日は鳥たちもさぞ暑かろう。
森に入り込んだトレイルの途中、カフェの入り口に差し掛かるところで、
今度は白鳥の親子たちがお出ましです。
かわいいねぇ♪
よちよち歩きのふわふわっこたちを観察していると、
シャーーーッ
（うちの子たちに近づくんじゃないよっ）
両腕をブワッと毛羽立たせて威嚇モードのママン。
ごめん、ごめんよぉ。
なんにもしないから。
「またねぇ。」
結束の固い白鳥の親子に癒された後は、
見晴らしの良いカフェのテラスでブランチタイム♪
ここにも白鳥さん。
人を怖がる気配もなく、バンのおこぼれをもらうべく愛想を振りまいていました。
今日のガソリンはトルティージャにチョコミルク。
オムレツにフォークをブスッと突き刺して提供するスタイルは、日本ではNGだけどスペインでは定番です。
ちょうど建物の影になっているテラスには爽やかな風が吹いて、疲労を少しずつ解きほぐしてくれます。
卵をつつきながら、プラスチックの椅子の上でしばらくグデーッと伸びておりました。
ひとしきり休憩をしたら、重い腰を上げて出発の準備。
靴下を履いて靴紐をキュッと締め、バックパックをうんしょと背負い、ちょうど良いポジションにセット。
両手にポールを握って道へと戻ります。
暑さに負けず、頑張らないとね。
貯水池の公園を抜けて国道に差し掛かると、
こんな標識を見つけてクスリ。
「巡礼者たちよ、背後のシカに気をつけるべし！」
目の前にナバレッテ（NAVARRETE）の街が見えてきました。
とりあえず、目指すはあそこ。
目の前と言っても近そうで遠い、なかなか辿り着かせてくれないのが It’s Camino Mystery! なのですが。
ブドウ畑越しのナバレッテ。
右手には白樺の森。
もう少し歩くと、
サン・フアン・デ・アクレの遺跡に辿り着きます。
1185年に創設された、巡礼者のための救護院跡。
右膝を痛めてパンプローナの病院に駆け込んだように、
大昔の巡礼者たちも道中で痛めた体を引きずって、ここで手当てを受けたのでしょう。
今とは違い設備の整った巡礼宿やバルなどはなかったでしょうから、それはそれははるかに過酷な長旅だったはず。
毎日シャワーを浴びベッドで眠りにつけて、美味しい食事とワインまでいただける。
現代だからこそ、こんなヒヨッコ巡礼者の私でも、極東日本からはるばるスペインに飛んできてカミーノに挑戦することができる。
この恵まれた環境に感謝しなければ。
イビキで眠れないだのwifiが使えないだのと、ウダウダ文句を言っていてはバチが当たりますね！？
遺跡の向こうにそびえるのは、ワイナリーDon Jacobo。
ああ、早く美味しいワインが飲みたい。
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そうこうしているうちにナバレッテに到達。
涼みがてら教会を訪れます。
（目的が不純？）
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涼むだけのはずが、想像以上に立派な黄金の祭壇と天井のアーチ、美しい装飾品の数々に圧倒され、
しばしホケーッと見とれつつ、
暗がりにようやく目が慣れてきた頃、
さて、そろそろ行きますか！と気合を入れて外に出ると、
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目が、目がぁぁぁ！！！
（引き続きジブリモード）
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つい取り乱してしまいました。
あやうく、照り返す太陽光線に目潰し攻撃を喰らうところでしたよ。
明暗の落差に順応するのに少々時間がかかります。
それもこれも、突き刺さるように眩しい強烈な日差しのせい。
やはり、今まで歩いてきた中で、今日は一番の暑さに間違いありません。
汗は吹き出し頭はクラクラ。
足取りヨロヨロ。
気を紛らわすために、iphoneにイヤホンを刺して耳を塞いでみました。
実は、音楽を聞きながらカミーノを歩くのは初めて。
お気に入りの歌を流しながらしばらく歩いてみたのですが、
数曲を聞いてそっとイヤホンを外しました。
注意力が散漫になって、五感が格段に鈍る感じ。
歩くことが惰性になる気がして私には合わなかったみたい。
目に入る景色はもちろんのこと、
音も匂いも温度も、
このうだるような忌々しい暑ささえ、
カミーノの全部を感じながら歩かなきゃもったいない気がして。
それよりも、
たっぷりと考え事をするのが好き。
歩いていると、すっかり忘れていた昔の出来事や感情が脈絡もなくふと思い起こされることがあります。
心の中で、知らず知らずのうちに引っかかっていた過去の出来事。
許すことができないまま蓋をしていたあの時の自分が突然顔を出し、戸惑いながらも目を逸らすことができずにしばし対峙する。
と思えば、まだ見ぬこれからのことを延々と妄想していたり。
過去、現在、未来を頭の中で行ったり来たり。
道にはたくさんのインスピレーションが転がっていて、湧き上がるアイディアや夢に胸を膨らませることも。
考え事にゆっくりと浸ることが難しい、慌ただしい現代の日常の中で、
ひらめきに委ね、黙々と思考を巡らせることのできる尊い時間。
それこそが、カミーノの一番の贅沢だと思います。
ここにくる前に、iphoneに音楽をしこたま入れておいたのだけど、
道中ではもうお世話になることはなさそうだな。
（旅の合間の長距離バス移動などは、ひたすら音楽を聞いていられるんですけどね！）
もちろん、音楽を聴きながら歩く人もたくさん！
歩幅のリズムを保つためだったり、
疲れを吹き飛ばすノリノリの曲でテンションを上げてみたり、
風景に合うBGMをチョイスして非日常の世界観にどっぷり浸るのも素敵だし。
歩き方にもちろんルールはなく、人それぞれってことです。
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しかし、何度も言うけど暑い。
こんな日に限って木陰はひとつもなく、
視界の開けた一本道は果てしなく続き、一向に終わる気配を見せません。
暑い時に、暑い暑いと繰り返してももなんの解決にもならない事は分かってはいるのだけど、
呟かずにはいられない。
「あぢぃ・・・」
スペイン、ついに本格的な夏に突入か！？
灼熱の蜃気楼か、はたまた幻影か。
いや、疲労の極限でしょうね。
立ちくらみ寸前、目の前がぼんやりかすみ始めた頃。
やっと、着いた・・・。
無事、目的地のVentosaに辿り着きました！
バックパックが密着した肩や背中は汗でびっちょり。
帽子の中は蒸されて湯気が出そう。
今日は高低差も少なく比較的平坦な道のりだったのですが、なかなかに過酷でした。
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小さなこの村にアルベルゲは一つしかないようで、迷わずそこへ直行。
いつものルーティンを済ませると電池が切れてしまったのか、
ウトウトと睡魔に襲われて、珍しくベッドでお昼寝をしてしまいました。
しかも3時間も！
もはやお昼寝とは言えませんね。
完全に寝過ぎてしまいました。
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目が覚めると当然空腹に気付くわけで。
近所のレストランに駆け込み、これまたいつものペルグリーノメニューをオーダー。
前菜は、以前食べて気に入った茹で野菜たっぷりのMenestra。
やっぱり美味しい！
メインは、「タラのリオハ州スタイル」なるお料理をチョイス。
これまたスパイシーなソースが絡んでうまい！
今日の食事は当たりだなー♪
総じて満足のディナーを平らげて、
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宿に戻り、パブリックスペースでパソコン作業をしていると、
欧米人の女性と会話をしていたアジア系の男性の、英語の話し方に妙に親近感を感じ、
思い切って声をかけてみました。
「あの、もしかして、日本人ですか？」
「はい、そうです！」
ビンゴ！
「昨日、ログローニョのアルベルゲでも見かけましたよね！？
日本の方だったんですね！」
彼の名はtakashiさん。
久しぶりに出会った同郷の巡礼者！
「ucaさん、明日はどちらまで行く予定ですか？」
「私は今日の暑さでやられてしまって。
明日はゆるめに距離を設定して、16km先のAzofraを目指す予定です。
takashiさんは？」
「僕はここまで少し急ぎすぎました。
毎日30km近い距離を歩いてきたのですが、足のマメが痛くて。
僕も、明日はペースを落として歩いてみようかな。」
「私はパンプローナ直前で膝を痛めてしまって数日動けない状態だったんです。
それからは自分の体と相談しながら。
たまにはのんびりもいいですよ！」
「それじゃ、僕もAzofraを目指そうかな。
ucaさん、明日のディナーはご一緒しませんか？」
「もちろんです！」
そんな約束を交わし、パソコン仕事を続けようとしたら、
21時頃だったか強制的にwifiを切られちゃいました。
巡礼者は早く寝なさいってことですね。
3時間もお昼寝をしてしまい夜は寝付けるか不安だったのですが、
心配をよそに、寝袋に潜り込むといつのまにかストンと眠りに落ちていたのでした。
一日中激しい暑さにさらされて、よっぽど体が疲れていたのでしょう。
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よく寝てよく食べてよく歩きよく飲んで、
なんて健康的な毎日！
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■カミーノ15日目
2017/6/1 （木）
Logroño – Ventosa ＜19.8km＞
アルベルゲ / San Saturnino ドミ10ユーロ Wifi ◎→×（夜は強制的に切られます）
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